『ウォンテッド』を観た。
会社勤めの俺は、自分が何者なのかもわからない。パニック障害があるので、薬を何時も手放せない。どんくさい俺は、上司には怒られ、恋人は俺ん家の台所で別の男(会社の同僚)とバコバコやってる。俺はそんな彼女の為にモーニング・ピルを買ってやる。そんな俺の前に突如としてアンジェリーナ・ジョリーが現れた。なんと俺は伝説の暗殺者の息子だと言うのだ。よし、いっちょやってやろうじゃねぇか!
『ウォンテッド』は血と銃弾がCGで飛び交う青春アクション映画だった。
主人公が他人とは思えなかった。いや、勿論彼女の辺りや会社勤めの辺りは全然違うんだけど、この映画を観に来ていた全ての一人の野郎にとって、単純で安直な性格をしているこの主人公は他人ではない筈だ(細かい事をいうと、僕もストレスとかがもろに腸に来るタイプなので「薬を手放せない」という設定まで被った)。「毎日同じことの繰り返し、ちくしょう!俺はこんなんじゃない筈だ!」と何処かで思っているが、具体的に何が出来るわけでもない。そして、すぐに謝り、意外なほどアッサリと一線を超えてしまう。
主人公の行動・心理が自分にそっくり過ぎて、最初はワクワクしたが、少しずつ居心地が悪くなる(具体的に言うとジョリ姐の壮絶カーチェイスが終わった辺りから)。
初の殺しの仕事で、主人公は失敗する。「上からの命令に従って名前しか知らない人を殺すことなど出来ない」という、至極真っ当な理屈だ。しかし、それも「運命だから」というジョリ姐の説得に納得してしまう。
開き直ったようにノリノリで仕事をこなす主人公を観ていると、居心地がさらに悪くなる。
そんな主人公は手痛いしっぺ返しを食らう。
何も考えずに運命に従っていればいいなんて、それでは最初と変わらないのだから。運命とは自分で切り開かねばならない。
ラスト、主人公は観客に問いかける。
「あんたは最近何した?」
その言葉は現実逃避を期待して来た客の胸に深く突き刺さる。
・・・・と、偉そうに書きましたが、ま、要はダメ人間的には感情移入出来過ぎてしまうという話です。
ドラマ的には、中盤まで主人公が親父を慕い続ける動機付けがイマイチ弱かったような気がします。あとは一般人巻き込みまくりの『カサンドラ・クロス』バトルは、主人公に感情移入していた私でも、居心地の悪さが凄かったです。あと、意外にゴア表現が凄まじいので(筆者的には全然ウェルカムですが)、その類の描写が苦手な人は困るかもしれません。後半もシリアス展開なので、「徹頭徹尾、爽快なアクション!」を期待すると裏切られると思います。
アクション的には前半のCGバリバリの「何が起こっているかよく分からんが、とにかくスゲェ!」という力技で見せるアクションが凄かっただけに、「拳銃リレー」のようなテクニックで見せるクライマックスのアクションが若干地味にも感じられました。また、ラスボスとの対決が意外に呆気なかったのも個人的には残念でした。せっかくの達人同士の対決なのだから、一対一で真正面からド派手な銃撃バトルをしてほしかったとも思います(そりゃモーガン・フリーマンに壮絶アクションを期待するのも無茶な話だが)。とは言え、前述したように前半のCGバリバリのバトルはかなり凄まじく、予告でも観れるビルからダイブ&乱射は物凄くカッコいいし、ジョリ姐のカーチェイスは、最早何が起こっているのかもよく分からないレベルですが、とにかく凄かったです(目が回るから苦手という人もいると思います)。喩えて言うならば(アニメの話になって申し訳ないのですが)『マクロスプラス』での板野一郎さんの描く空中戦を完璧に目で追いきるのは多くの人には不可能だと思いますが、そのスピード感には有無を言わせぬ迫力と爽快感があります。あんな感じです。
つまり、CGが凄いのではなくて、監督のイマジネーションが凄いのだと思います。CGを見せるのではなく、CGで見せる。『マトリックス』以降のアクション映画における、正しいCGの使い方を実現したアクション映画だと思います。
『ウォンテッド』・・・・★★★★☆