『ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!』を観た

ロンドンで活躍する超敏腕警察官のニコラスは、周囲が無能に見えるほどの頑張り過ぎが疎まれてド田舎に左遷される。そこは表彰を受けるほどの平和な田舎だったが、何処か歪な所があった。案の定、村人は狂気の集団であることが判明。ニコラスは現地のボンクラ警官ダニーと共に戦いを挑むのだった。



前作『ショーン・オブ・ザ・デッド』は終始ニヤニヤしながら観た。凄く面白かったけど爆笑した記憶は無い。だから、今回も最後までニヤニヤしながら見るような感じだと思っていた。違った。今回は爆笑するポイントが何箇所もあった。でも、それが逆にいけなかったのかもしれない。
どうも前半がダレる。
トニー・スコット風の演出を何でも無いシーンに使う、というギャグをひたすら押すのがキツかった。一回目は笑ったのだけど、僕は二回目以降はダレてしまった。とは言え、これは僕が同じギャグをしつこく繰り返すネタがあんまり得意じゃないせいだとも思う。
あとキツかったのは、謎を追う部分だ。あのダラダラした空気、そして会話の中にある気の利いたジョークを楽しむのが英国流なんだろうけど、その流れをブッた切るようにドリフ的(「ザッカー的」でもいい)な即物的な笑いが入るので、ドリフやザッカーが大好きな僕はそっちにばかり反応してしまう。そのせいで、そうでない部分がダラダラしてるなとも感じてしまう。「もっとその手の悪趣味残酷ギャグを中心に!パブでダラダラしてる場合じゃねぇよ!」と身も蓋もないないことも思った(その手のギャグに終始したら英国コメディーでなくなるだろうし、例の署名活動も起きなかっただろうけど)。
あとはラストの銃撃戦。もうちょい派手に、それこそマイケル・ベイジョン・ウーのようにキメキメ&ド派手に撮ってほしかった。この辺りは監督がアクション演出に関しては本職ではないから仕方がないのだろうけど。
・・・・等と偉そうに文句ばっかり書いたが、これは全て僕自身の細かい嗜好の問題だ。と言うか、ここまで読み返してみて、我ながら傲慢な文書だ。「英国産コメディーだと知りながら観に行って、英国コメディーは気に入らん」ってちょいと我儘だろ。この精神的白豚野郎、ちょっと死んでこい。



生きる



では、こっからは良い話を。偉そうに文句ばっかり書きましたが、全体を通してみるとかなり面白かったです。特に「主人公ニコラスの推理が実は全く見当違いでしたー!動機はもっと無茶苦茶でしたー!ヒャヒャヒャー!」辺りからの流れは大好きです。
前述したように、ドリフ的な笑いが多いのも気に入りました。パントマイムのオッサンのギャグや、パブの子供たちのギャグ。あとは知恵遅れのオッサン絡みのギャグ。そして、まさかのラスト。この21世紀に爆発オチで最後を締めるとは思わなかったです。しかも、ガレキの中でゴホゴホ言いながら「大丈夫かー!?」と確認しあうとか、もう劇場で観ることは出来ないだろうと思っていましたから。あとは人体損壊系のギャグが妙にツボに嵌りました。特に、非常に重い落下物の直撃を食らって頭がグチャグチャに潰れて無くなってしまった人がフラフラと歩き回るシーンで大爆笑(こう書くと笑えないシーンみたいですが、見せ方は本当にコミカルです。エグイけど。)。あの一連の残酷ギャグは、『バット・ボーイズ・2バッド』でロシアの死神さんの連れが缶詰にされて出てくるシーンで笑った人間としては、「おお!マイケル・ベイやね!」と親指を立てました。そして監督の誠実さ。元ネタを知らなくてもクライマックスの重要なパロディーが分かるようになっているし、分かる人には分かるギャグもあるし(なんでチャック・ノリスの数ある映画郡の中からよりにもよって『バイオニック・マーダラー』を選んだのかとか)。本当に気の利いた映画です。そんなわけで、映画的な完成度は素晴らしいモノがあります。そして数人の被害者を除いては、誰も死なないというピースフルな側面も(それは違うか)。
ただ、映画的な完成度よりも、勢いで暴走するような映画が好きな僕としては、やや不満が残るのも事実です(この感覚は先生が何故か優等生よりもヤンキーを可愛がる感覚に近いのかもしれません)。
とは言え、個人的には『バットボーイズ2バッド』と『ハートブルー』に紛れて、セガールの『アウト・フォー・ジャスティが画面に堂々と映っていただけで、何というか、もう満足です。セガールをデカい画面で見るのは『イン・トゥ・ザ・サン』以来だったなぁ。『DANTOTSU/弾突』北九州でもやらないかなぁ。



ホット・ファズ/俺たちスーパーポリスメン!』・・・・★★★★☆

追伸、この映画の公開を求める署名活動には僕も参加しました。で、そのコトを踏まえた上で何か一言いうならば、なんで同じ全米大ヒットコメディーである『最終絶叫計画4』の公開を求める運動は一切起こらなかったのでしょうか。大好きだったんだけどな、アレ。